「ガジュマルの木と一つになったツリーハウス」
沖縄県浦添市にあるたいよう保育園。その園庭にシンボルツリー、ガジュマルと融合するように設置されたツリーハウスがあります。とても愛着のあったガジュマルの木を可能な限り切らず、木々等の自然に対して遊具の形状を合わせることを基本として設計されたツリーハウスは、子どもたちの心に挑戦する気持ちや、それを応援したくなる気持ちを芽生えさせ、社会性や情緒性を育んでくれます。またお気に入りの場所や、安心できる場所だと感じている子どもも多く、子どもたちにとってワクワクした時間をくれる、隠れ家的存在にもなっています。
Images
Production story
BACKGROUND
ガジュマルの木は、実は数年前、根が建物あたりまで伸びていたために「伐採した方がいい」との声が挙がったことがありました。移植する方法では木がもたないという状況の中、それでも愛着があったので可能な限りの手を尽くし、そのおかげで、今も元気に育ってくれています。子どもたちと保育者で作った“ガジュマルの歌”もあるくらい愛されるこの木と、ひとつになったツリーハウス。これからはガジュマルの木と共にさらなる愛着が育まれていくものになりました。
INSIGHT
小学生のころ木の上に家を作り、自分たちだけの隠れ家で楽しい時間を過ごす。いつもワクワクの時間をくれたあの体験を、子どもたちにさせてあげたいとの思いから、「木と一つになったツリーハウス」を作ることになりました。園長先生がこだわったのは“遊具”に対して“自然”を合わせるのではなく“自然”に対して“遊具”を合わせること。そうすると遊具を使ってあそぶ子どもたちが“自然”に対して合わせてあそぶことになり、その先に“相手”に合わせて行動するという社会性の教育にもなります。そのためこのツリーハウスは、できるだけガジュマルの木は切らないことを設計の基本にしました。
SOLUTION
沖縄は車社会なのであまり自分の足で歩きません。大人が歩かないので、当然子どもも歩かなくなる。その結果、全体的に肥満の人が増えている傾向にあります。PLAY DESIGN LABのフェロー、早稲田大学の 前橋明教授も以前、「歩かないことは、沖縄から陸上の選手が輩出されていないことに関係している。走るの基本は、歩くこと。外で身体を十分に動かすことで、子どもたちは知らないうちに、遊びの中で体づくりができる」という話をされていました。優れた遊具は、自然に身体を使って運動することを可能にします。このガジュマルのツリーハウスで何気なく楽しんでいる時間も、子どもたちの運動機能向上につながっていきます。
HOW IT WORKS
登り棒
踊り場の床をくりぬいて、登り棒を通し、棒を伝って上から下へ消防士のように降りるアイデアです。子どもたちは、入口から出口へ行動することに達成感を覚えますが、上り棒での行動は、より大きな達成感をもたらしてくれます。上まで登れた子はその大変さや登り方を体験しているから、今度は上から応援するようになります。
滑り台
0歳児から園庭で遊ぶので、できるだけ幼い子も遊べるツリーハウスになるよう計画せねばなりません。それを解決するのが滑り台です。低年齢の子は、登り棒やガジュマルの木を伝っての上り下りは難しくても、滑り台を使えば可能になります。滑り台が「上り台」としても機能するからです。また、同時に階段についても、1才の子が挑戦したくなるようなイメージで低めに製作しました。
ネットのトンネル
設計においてのポイントは、「簡単にはクリアできないこと」。身体を反転させる動作に普段使わない筋肉を使ったり、どうすれば通り抜けられるか考えを巡らせたりしながら、いつもの120%の力を出さないと通れない場所にしました。それにより通り抜けた子どもたちが、より大きな満足感を得られるようになっています。
スピーカー電話
タワーの上にいる子どもと、地上にいる子どもがスピーカーを通して話せます。
動物のオブジェ
ツリーハウスには、ゴリラ、リス、フクロウをモチーフにしたオブジェが。3体とも木製なので、より自然との一体感が増します。これを使った遊びも楽しむことができます。
DATA
「ガジュマルのツリーハウス」
所在地:沖縄県浦添市
設置年:2018年
クライアント:社会福祉法人太平福祉会 たいよう保育園
遊具製作:ジャクエツ