プレイデザインラボから誕生した遊具「マウンテン」が、国際的に権威のある「iFデザインアワード2018」をプロダクト分野・ベビー/キッズ部門で受賞した。
[iFデザインアワードについて]
iFデザインアワードは、1953年の設立以来、65年にわたり、国際的に権威のあるデザインアワードのひとつとして国際的に認知されている、ドイツで開催されるデザイン賞。今回も、54の国/地域から集まった6,400件を上回る応募デザインが厳正に審査され、受賞作が選出された。
今回は「マウンテン」のデザイナー 澄川伸一氏へのインタビューと、ドイツ在住のプレイデザインラボ特派員からの授賞式レポートを皆さまにお届けします。
大自然の山のエッセンスを凝縮した「マウンテン」
「マウンテン」をデザインしたプロダクトデザイナーの澄川伸一氏は、曲面の美しさを追及し、遊びとアートを融合させた遊具「MEBIUS」を手掛けたデザイナーです。(「MEBIUS」について>>
以前のレポートはこちら)
今回、iFデザインアワードを受賞した遊具『マウンテン』について、そのコンセプトや狙いについて伺いました。
FRP遊具『マウンテン』
― とにかく一番大事なことは、子どもの頭の中で起きる「想像力」を引き出してあげることだと思っています。空に浮かぶ雲が、「鳥」や「魚」に見えたりするのをたのしむような感覚にちかいかもしれません。
「マウンテン」は、登って滑り降りる単純な滑り台ではなく、一つの大自然の「山」を凝縮したエッセンスがその造形に詰まっています。
登ることが楽しくなる、段差の高さの異なるステップ。
太鼓橋のようにうねり、徐々に壁が迫り来る冒険通路。
遠くまで見渡せる、一気に大きく開ける頂上デッキ。
カーブしながら、一気に加速して滑り降りる滑り面。
登り口の反対側に配置された秘密の洞窟。
これらを、貝のような「らせん」の滑り台としてまとめ上げることで、子どもたちは滑り降りた勢いのまま、自然と回遊し何回でもマウンテンに登ろうとするのです。実際に子どもたちに遊んでもらい、夢中で滑り台を繰り返す回数、速さ、そして滞在時間の長さに驚いています。
マウンテンには子ども達が思わず夢中になる仕掛けがあちこちに散りばめられています。
―本来、人が「遊ぶ」「楽しむ」といった行為には言葉や国籍の垣根はないはずです。 ヨーロッパでこのような名誉ある賞がいただけたことは、この大型遊具「マウンテン」の魅力がそのまま伝わったんだろうなということに、とてもデザイナーとしてうれしく思います。
「カタチ」がもつ「魅力」と「力」 それは、年代、国籍をこえた私たちの日常生活をとても豊かにしてくれます。子どものころからできるだけ「気持ち良いデザイン」にふれる機会が今後もたくさん増えてくれるとを願います。
色は太平洋の海を連想させる「青」と、新鮮なトマトのような「赤」の2種類。[マウンテンの模型 1/10サイズ]
全長4m、高さ1.9mの巨大なFRP遊具「マウンテン」。
シンプルな形状に、その名の通り山登りのような様々な要素が詰まった「マウンテン」は、
何度でも登りたくなり、そして、滑り降りる度に新しい発見がある遊具です。
世界中からデザイナーが集まる、iFデザインアワードナイト
(現地取材:プレイデザインラボ ドイツ特派員 / クーグルマイヤー洋子)
「マウンテン」が受賞した2018年 iFデザインアワードの授賞パーティー『iFデザインアワードナイト』は、ミュンヘンのBMWヴェルトで行われました。BMWヴェルトはオーストリアの建築事務所コープ・ヒンメルブラウによって設計され、2007年に完成。その未来的なデザインで高い評価を得ている建築物で、iFデザインアワードの授賞パーティーにふさわしい場所と言えるのではないでしょうか。
会場のBMWヴェルト iFアワードナイトのエントランス
午後6時の開会前、すでにたくさんの人が集まっていましたが、まず目つくのがアジア各国からの来場者の多さです。75のゴールドアワードのうち27か国がアジア圏からの受賞のため、これほど東洋系の方が多いのも納得できる気がします。この年は、54か国から合計6.402件のエントリーがあったそうです。
会場では、ドイツ語、英語、中国語、韓国語、日本語等々、様々な言葉が行き交い、とても国際的でオープンな雰囲気でした。
受賞者の名前がすべて書かれたボード。
会場がたくさんの人で賑わう中、19時からゴールドアワード受賞者の発表が始まりました。
パーティー会場各所に設置された大きなモニター前には、ホールでのセレモニーの様子が映し出されています。特に優れた作品に授与されるゴールドアワードの受賞者75組すべてが呼ばれ、プロダクトの発表後にそれぞれ表彰されます。
21時過ぎからビュッフェが開き、ゴールドアワード以外の受賞者に受賞証明書が配布されました。私も配布場所に「マウンテン」の受賞証明書を取りに行きました。
受賞証明書の配布場所で、名前を探す配布担当者。
その後、会場は来場者に翌日午前2時まで提供されていました。世界各国からのデザイナーが受賞を夜遅くまで祝い、情報交換をするのでしょう。
夜遅くまで、受賞者の交流は続きます。
マウンテン 掲載:
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