PLAY DESIGN LABの全プロダクトが一堂に会するイベント「こども環境NEXT100」に潜入!

July 14th, 2016
PLAY DESIGN LAB
プレイデザインラボ 事務局
澄川 伸一
プロダクトデザイナー / 大阪芸術大学 教授
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こんにちは、PLAY DESIGN LAB(プレイデザインラボ)編集部の後藤です。

大田区産業プラザPiO会場にて開催された、招待制の展示会イベント「こども環境NEXT100」に、PLAY DESIGN LABが関わった遊具が展示されると聞き、潜入取材してきました。

会場では遊具の展示だけでなく、セミナー、ワークショップ、見学ツアー、園児服のファッションショーといった様々なコンテンツが同時進行で行われており、全国から来場された保育関連施設のお客さまや関係者の方々は、商品に触れ、体験し、気に入ったものがあれば購入したりと、笑顔と活気のあふれる空間でした。

今回は「こども環境NEXT100」の展示会レポートをご紹介したいと思います。

 

 

なぜタコの滑り台は僕らの心をつかむのか? 「MEBIUS(メビウス)」 デザイナー  澄川氏の講演会


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会場には講演会スペースが併設されており、私が訪れた時にはプロダクトデザイナー 澄川伸一氏の講演が行われていました。国内外で数多くの賞を受賞するなど、トップデザイナーとして活躍されている澄川氏。PLAY DESIGN LABのメンバーでもあります。

そんな澄川氏の講演テーマは「なぜタコの滑り台は僕らの心をつかむのか?―遊具と造形の関係性―」。思わず興味をそそられるタイトルです。

澄川氏「万博が開催された時期に、団地にシンボルとしてたくさん設置されていたのが、このコンクリート素材のタコ型の遊具でした。昔から人気を集めていたタコ型遊具ですが、実はこちらの遊具、現在劣化が進み安全基準の問題から撤去され絶滅寸前なんです。」

「でも日本人は何故、見た目がグロテスクな「タコ」を遊具にしようと思ったのでしょうか。私は理由が知りたくて、遊具メーカーのジャクエツさんと一緒に研究をすすめました。するといくつか結びつきそうな情報を知ることができたのです。

 

 

<タコの遊具の人気の理由>


■幼児の特徴として丸いものを好む傾向がある。タコの頭の部分はシンボリックな丸みがあり、こどもに人気がある。


■タコ遊具は見る位置によって見え方が違い、周りをぐるぐるまわると形が異なって見える。想像では補えないデザインに子どもは一周してみたり、飽きずに遊ぶことができる。


■登る動線がたくさんあることで、さまざまな体験ができる。


■子どもは狭い空間をよく好むので、洞穴のような内部空間は人気がある。


■「世界で一番タコを消費している国」が日本である。


 

 

澄川氏「タコの遊具研究を通して気づいたのですが、これからの未来の遊具は子どもが遊んだときに、イメージを膨らませることのできる、頭のなかで大冒険ができるような想像の余地を作ってあげることが大事だと思いました。」

 

「子どものあそび方を限定する遊具ではなく、抽象化したデザインによりイメージを膨らますきっかけを与えることができる遊具が理想的だと考えています。ただタコの遊具は、安全面から残念ながら今の時代には適していません。タコの遺伝子を継承して、今の時代にあったアプローチがこれからは必要なんだと思います。」

 

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これから先、タコの遊具のように、子どもたちに愛され、彼らのイメージを膨らませることができる、現代的な造形の遊具が増えてくるのでしょうか。期待ですね。

 

その他にも、澄川氏によるデザイン遊具の第一号でもある「MEBIUS(メビウス)」を含め、ご自身の作品や、海外の事例、ランドスケープのお話などと一緒に、様々な角度からあそびと造形の関係性についてお話しいただきました。

 

「MEBIUS」は、従来の遊具にないような、抽象的でオブジェのような美しさとかっこよさを持っています。公園の芝生の上にひとつあるだけで、人々の視線を集める華やかさや魅力がありますよね。それと同時に、見る角度によって様々なイメージを子どもに与える「MEBIUS」はタコ遊具に通じたものがあるように感じました。

 

 



 

 

大人になった今も楽しめる。 遊具あそびが体験できるプレイデザインラボツアー


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講演会後は、一般の方も参加できる “プレイデザインラボツアー”に同行しました。

こちらのツアーでは、スタッフの方が「PLAY DESIGN LAB」のスペースに展示されている遊具を、ひとつひとつ丁寧に説明してくださり、実際に遊具に触れてあそびを体験させてもらえるような機会となっていました。

最初は羞恥心が邪魔をして、積極的に遊具に乗ってみようという気持ちにはなりませんでしたが、スタッフさんたちが先導して、遊具に登ったり、すべったりしながら説明をしてくださっていたので、ツアー参加者の方々も段々とその雰囲気に慣れ、それぞれ自由にあそびを楽しむようになりました。

澄川氏が講演会で「大人が楽しめない遊具を、子どもが楽しめるわけがない」といったお話をしていましたが、まさにその通りだと感じます。

 

澄川氏がデザインした「MEBIUS」も会場に展示されていて、実物に触れながら、澄川氏に直接説明していただけました。

真っ赤なボディと裏表がねじれながら一つの輪になる不思議な型。すべったり、またがったり、座ったり、跳ねたり、潜ったり、アイデア次第でさまざまなあそびが楽しめます。

 

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大人になった今、遊具に触れて遊ぶ機会がなかなかなかったのですが、プレイデザインラボツアーを通して子ども心を思い出す、貴重な体験ができました。

 

 

 

NEXT100  こども環境が拓く未来


こちらは遊具以外の展示会場を上から見た光景です。キッチン(食育)、トイレ、制服、家具・備品、教具、アプリ……など、子どもが育つ環境に必要なさまざまなものが展示されていました。

 

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見て回って目を引いたのはこちらのFAB(fabrication/ものづくり)スペース。デジタル上で描いた絵を、3Dプリンタを使って立体作品にしたり、スマートフォンやタブレットを使ったりと、自身が経験してきた子ども時代とは違い、最先端技術を取り入れたものも多く、テクノロジーの発達と時代の変化を強く感じました。

 

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今回の展示会テーマでもあった「NEXT100」。こどもの未来環境づくりによる変化は、必ず大人の私たちの生活にも影響します。他人事と思わず意識して、子どもの未来環境に目を向けていきたいと思いました。

 

PLAY DESIGN LABの今後の展開、これからも楽しみです!

 

 

(PLAY DESIGN LAB 編集部 ライター / 後藤あゆみ)