地球とあそび、広がる未来 ー 株式会社ゴールドウイン 代表取締役 渡辺貴生氏 インタビュー

May 21st, 2022
渡辺 貴生
株式会社ゴールドウイン 代表取締役
2022年4月23日から5月29日、東京ミッドタウン芝生広場にて、子どもやファミリーを対象にしたイベント「PLAY EARTH PARK(プレイアースパーク)」が開催されている。主催者である株式会社ゴールドウインは、創業72周年の歴史を誇るスポーツアパレルメーカーだ。スポーツの可能性を拡張し、美しい自然とともに人間らしくある未来へと進むため、2020年に「PLAY EARTH(プレイアース/地球と遊ぶ)」というコンセプトを掲げた、同社の渡辺貴生社長に「あそびの可能性」についてお話を伺った。

 

 

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東京ミッドタウン芝生広場にて2022年5月29日まで開催中の「PLAY EARTH PARK」


 

 

―株式会社ゴールドウインは「PLAY EARTHプロジェクト」を立ち上げ、様々な企画に挑戦されていますが、どのようなきっかけで生まれたプロジェクトなのでしょうか?


渡辺:大きなきっかけは2020年に開催予定だった東京オリンピックでした。これをきっかけに世界中から多くの人が訪れるだろうと考え、創業70周年を迎える弊社の取り組みを世界に伝えたいと思い企画したのが「PLAY EARTHプロジェクト」です。そのために、若手社員中心の「プロジェクトVISTA」というチームを立ち上げました。VISTA(ビスタ)とはスペイン語で展望という意味ですが、ダブルミーニングとしてビジョンのV、インスパイアのI、スマートのS、トラストのT、エイブルのAという意味を持たせました。

 

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株式会社ゴールドウイン 代表取締役 渡辺貴生氏


 

 

―「PLAY EARTH」のコンセプトについて教えてください。


渡辺:プロジェクトVISTAのメンバーと話し合いを重ねていく中で、「そもそもスポーツとは何なのか?」という話になりました。そこで、スポーツ(sports)の語源を紐解いていくと、ラテン語のデポルターレ(deportare)という言葉にたどり着きました。この言葉には「遊ぶ」という意味が含まれます。つまり、スポーツの語源はあそびであり、余暇を楽しむことであるということです。人間が狩猟生活を営んでいた頃、獲物を追いかけて走ったり、木に登ったり、槍を投げたり、魚を捕るために泳いだりと、運動能力が何よりも重要でした。当時は1日3時間ほど集中して狩りをして、残りの時間は楽しみながら身体を動かしていたそうです。私はこれがスポーツの始まりだったのではないかと考えました。まさしく地球を楽しんでいると言えます。

「スポーツは、地球を楽しむこと」であると定義し、弊社が子どもたちに大きな未来を提供できる会社となるために、子どもたちに伝えたいメッセージとして「PLAY EARTH」をコンセプトにしました。

 

 

―「スポーツ=あそび」ということなのですね。渡辺社長は「あそび」をどのように捉えていますか?


渡辺:子どもは小さい頃から自然と一人あそびを始めます。最初は両親と一緒に遊ぶことで、「人間」という存在を理解して安心し、頼るようになります。そして、次第に友だちと一緒に遊ぶようになることで、コミュニケーション能力を養い、コミュニティを広げていきますよね。おもちゃ、ゲーム、自然を使い、ひとりで、そしてみんなで遊んでいる時の人間は、とても集中しています。スポーツで言う「ゾーン」のような状態で、人間にとって一番心地よい状態にあることが「あそび」ではないかと考えています。つまり、あそびは人間の本質的な状態を作りあげる上で、最も必要なものなのではないでしょうか。このように「あそび」を捉えているので、弊社の社員には「仕事とあそびの境界線を引かないように生きてほしい」とよく伝えています。あそびのように仕事を楽しむことができれば、絶対に世の中は明るくなります。自分自身が仕事を楽しめれば、周りの人たちも楽しくできます。PLAY EARTHプロジェクトを通して社員一人ひとりが「あそび」について真剣に向き合い、新たな概念が生まれることを期待しています。

 

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「あそびのように仕事も楽しんでほしい」と語る 渡辺氏


 

 

―現在、東京ミッドタウンにて「PLAY EARTH PARK」が開催されていますが、イベントを開催したきっかけを教えてください。


渡辺:元々は東京オリンピックの開催に合わせたウエルカムイベントをやるつもりでした。新型コロナウイルス流行の影響で今年の開催となりましたが、このイベントが弊社を知ってもらうのに一番ふさわしい方法だと考えました。

私の理想は「言葉がなくてもつながれる社会」です。『あかいふうせん』(著:イエラ・マリ)という絵本があるのですが、この絵本には文字が書かれていません。言語、文化の違う世界中の親たちが、自分たちの経験を元にたった一つの物語を紡いでいくのです。言葉がないからこそ、世界中の子どもたちにメッセージを伝えられる絵本に私は感動しました。

「PLAY EARTH PARK」はこの理想の社会を体現したイベントです。言葉が通じない世界中の子どもたちが集まり、一緒にゲームやルールを作りながら遊んでほしいという願いを込めました。そのためにも、あそび方を教えなくても自由な発想で遊べる遊具づくりを依頼しました。また、地球全体を子どもたちに感じてもらうため、地や水、火、風、空といった地球のエレメントをデザインで表現していただきました。

 

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上から「火」、「地」、「空」がテーマの遊具で遊ぶ子どもたち


 

 

―「PLAY EARTH PARK」は言葉がなくてもつながり、遊べる場なのですね。建築家など、様々な分野の方とコラボレーションしていると伺いました。


渡辺:建築家やファッションデザイナー、書道家、アーティストをはじめ、各分野の人たちにユニークなアイディアでPLAY EARTH PARKのコンセプトを表現していただきました。地球全体をあらわすストーリーを私たちの手でつくり、それを見た子どもたちが大人になって思い出してくれたときに、どのようなドラマがあるのだろうと話し合いながら進めました。

 

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地球を構成する5つのエレメントをテーマに建築家たちがデザインした、これまでにない新しい「遊具」


 

 

―子どもも大人も楽しめるあそびには無限の可能性が秘められていますね。渡辺社長が「あそび」に期待することを教えてください。


渡辺:私はアウトドアが好きで、世界中の海や山によく訪れています。自然があふれる場に訪れると、地球環境の変化を感じ取ることができます。自然は経験することで、地球の面白さやすごさを理解できるようになります。子どもたちは本来、自分で判断して自然を楽しむことができるのですが、それを大人が「危ないから触ったらダメ」と教えるので、子どもたちも自然を怖がってしまうのです。自然と向き合えば、怖いこともやってはいけないこともおのずと理解できるようになります。子どもたちに自然や環境について教えるためには、大人たちがもっと自然を知らなければなりません。

子どもたちが自然の中で、地球とあそんで未来を切り開くためには、子どもと一緒に全力であそぶ大人が必要です。大人自身が変わり、子どもにあらゆる経験をさせて、あそびを通して学ばせてあげることができれば、素晴らしい未来が訪れるのだろうと思います。

 

 

 

PLAY EARTH PARK -TOKYO MIDTOWN- についてはこちらから↓


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写真提供:株式会社ゴールドウイン